【医師監修】海外赴任者の「早期帰任」を防ぐには?産業医と専門医の役割分担から見直す「健康管理規程」の重要性

海外駐在員向けオンライン医療相談

海外事業の成否を握る「海外赴任者」の選定。多くの企業では、スキルや適応力を慎重に評価して人選を行っています。しかし、どれほど優秀な社員を選出しても、現地での体調不良やメンタル不調による「早期帰任」のリスクはゼロにはなりません。

一人の駐在員が任期途中で帰国した場合、派遣コストや事業の停滞による損失は数千万円にのぼる可能性もあります。この経営リスクを最小化するには、個人の資質に頼る選定だけでなく、会社としての「健康管理規程」を実効性の高いものへアップデートする必要があります。本記事では、海外赴任を円滑に進めるための「選定時の盲点」を整理し、産業医と専門医の役割分担、そして規程を見直す際の具体的なチェックリストについて詳しく紹介します。

「国内での健康」が現地でのパフォーマンスを保証しない理由

海外赴任者の選定時に多くの人事が参考にするのは「健康診断の結果」です。しかし、日本国内の環境下での「A判定」は、必ずしも過酷な海外環境での適応を保証しません。ここでは、選定段階で人事担当者が陥りやすい3つの盲点を解説します。

① 環境要因による「物理的な健康悪化」

国内では全く問題がなかった持病(軽度の喘息、アトピー、消化器の弱さなど)が、現地の深刻な大気汚染、硬水、衛生環境によって急激に悪化することがあります。

② 自己申告や周囲の評価だけでは見えにくいメンタルリスク 

選定時に「精神的にタフである」と判断された人材であっても、異国の地での孤独感や重責は想定以上の負荷となります。特に深刻なのはメンタル不調における「言語の壁」です。身体的な疾患と異なり、心の不調は現地の言葉では微細なニュアンスを伝えにくく、適切なカウンセリングや治療を受けられないことが進行を深める要因となります。こうした不調を周囲に隠し、気づかないうちに深刻化してしまうリスクを防ぐ仕組みが必要です。

参考:
【医師監修】海外赴任中のメンタル不調(うつ病等) は回復まで300日以上? 予防と対策の重要性
うつ病、メンタル不調の多い国は?ストレスに繋がる要因は?職場のメンタルヘルスケアの必要性

③「帯同家族の心身の健康」という重要な視点

駐在員の早期帰任理由として、本人の不調以外にも考慮すべきなのが「家族(配偶者や子供)の不調」です。

  • 慣れない土地で子供が急に発熱した際など、どこへ受診すべきか判断が難しい
  • 言葉の壁により、現地の医師へ症状を正確に伝えられない不安がある
  • 相談相手が身近におらず、育児や生活の悩みを一人で抱え込んでしまう 

家族がこうした不安を抱えている状況は、駐在員自身の心理的な負担にも繋がり、結果として業務に集中しきれない環境を生んでしまうことも少なくありません。最終的に、大切な家族を守るために「早期帰任」という決断を選択せざるを得ないケースも、決して珍しくないのが実情です。

「国内での健康」が現地でのパフォーマンスを保証しない理由

産業医と専門医の役割分担:海外拠点を支える「新しい補完関係」

人事担当者がまず整理すべきは、「誰が、どの範囲をサポートするのか」という役割の明確化です。日本の産業医体制は国内法に準拠した素晴らしい仕組みですが、物理的な距離や専門領域の特性上、海外拠点のあらゆる医療相談をカバーするには限界があります。

産業医は、労働安全衛生法に基づき「企業全体の安全配慮義務」を統括するプロフェッショナルです。組織のガバナンスを支える役割として、渡航の可否判断や就業判定といった重責を担います。

一方で、現地で発生する具体的な体調不良や不安に対しては、各診療科の専門医による知見が必要です。「夜中の子供の発熱」「言葉の通じない環境での皮膚トラブル」など、診療科レベルの判断が求められるシーンでは、全般的な管理を行う産業医だけでなく、小児科や皮膚科といった各分野の医師による具体的なアドバイスが重要となります。

比較項目産業医(守りのガバナンス)専門医(具体的な医療アドバイス)
主な役割健康診断に基づく就業判定、復職支援、安全配慮義務の履行。各診療科(小児科、皮膚科、循環器等)による直接相談・判断。
得意領域組織全体の管理、国内法(安衛法)への準拠。個別の症状に対する医学的知見、具体的アドバイス。
活用シーン「この社員を海外へ送ってよいか」の最終判断。「今、子供が熱を出した」「この薬を飲んでいいか」の即時相談。

特に海外赴任で最も発生頻度が高く、かつ対応が難しいのがメンタル不調です。 産業医による就業判定も重要ですが、実際に現地で悩んでいる本人や家族が、「母国語(日本語)で、専門的な知見を持つ医師にすぐに相談できる窓口」を持っているかどうかが、早期帰任を防ぐ決定的な差となります。

参考:【医師監修】うつ病かも?精神科の専門医とは?心療内科との違いは?専門医ができること

産業医が「制度と運用」を支え、専門医が「個別の医療課題」に答える。この両輪が揃うことで、海外拠点の安全網はより確かなものになります。

実務チェックリスト:健康管理規程で見直すべき「5つの項目」

規程を形骸化させず、実効性のあるものにするために、以下のポイントが網羅されているかを確認しましょう。

  1. 帯同家族を支援対象に含める検討
    • 家族の健康状態や現地環境への適応は、本人のパフォーマンスに直結します。本人のみならず家族も含めた相談体制を規程に盛り込むことが、結果として赴任成功率を高めます。
  2. 日本語による「診療科別の相談窓口」の明記
    • 産業医への相談とは別に、各診療科の専門医に直接アクセスできる権利を保証することで、現場の不安を早期に解消します。
  3. 時差・休日を問わない支援体制の確保
    • 不調は日本の営業時間内に起きるとは限りません。夜間や休日の緊急事態に、日本側からどうバックアップするかを定めます。
  4. 現地の病院受診前の「判断プロセス」の設置
    • 「軽症での受診拒否」や「専門医への長い待機期間」など、日本と異なる医療水準・慣習は赴任者の大きな不安要素です。受診前に日本の医師が「受診の必要性」を判断するフローを整えることは、本人の安心感に加え、不適切な受診によるタイムロスや高額な医療費の抑制に直結します。
  5. メンタル不調の「未然防止」としての日常相談推奨
    • 重症化してからの面談ではなく、日常的な身体の悩みを気軽に専門医へ相談できる環境を「予防策」として定義します。

早期帰任に伴う「経営リスク」

健康管理規程の形骸化が招く最大の懸念は、早期帰任による不測の損失です。これは単なる費用の問題だけでなく、複数のリスクが連鎖します。

  • 直接的なコスト負担: 渡航・引越費用、ビザ取得費、家賃の違約金など。
  • 事業計画への影響: 重要プロジェクトの停滞や、現地スタッフとの信頼関係の再構築コスト。
  • 採用・育成コストの毀損: エース級人材のキャリア断絶や、後任者の急な選定に伴う組織への負荷。

これらを総合すると、早期帰任が企業に与えるダメージは極めて大きく、規程を整備し専門医によるバックアップ体制を整えることは、事業継続のための合理的な投資と言えます。

サポート体制を補完する外部サービスの活用

こうした「産業医ではカバーしきれない各科専門領域のサポート」を強化する選択肢には、海外旅行保険の付帯サービス、現地提携病院の活用、外部のオンライン相談窓口の導入などがあります。

その中でも、日本の各診療科の専門医に24時間、直接相談できる体制は、駐在員の安心感を高める有力な手段となります。

日本人専門医によるオンライン医療相談サービス「Medifellow」

例えば、株式会社medifellowが提供する「Medifellow」は、美容以外の全診療科(33科500人以上)の専門医ネットワークにより、規程で定めた支援体制を実務レベルで支えます。

  • 33科の専門医が日本語で対応: 特に相談が多く、かつ現地での受診ハードルが高い「メンタル不調」についても、日本の精神科医に日本語で直接相談が可能です。言葉の通じない現地病院では難しい微細な症状の共有も、日本語であれば安心して相談することができます。
  • 受診判断や紹介状の作成: 「現地の高額な病院へ行くべきか」を日本の医師が医学的観点からアドバイスします。また、現地の病院を受診する際に役立つ、英語や現地語の紹介状作成もサポートしています。

▼【法人利用】オンライン医療相談サービス「Medifellow」
https://corporate.medifellow.jp

【法人利用】オンライン医療相談サービス「Medifellow」

まとめ:規程は「現場の安心」を支えるためのインフラ

健康管理規程の見直しは、単なるルール作りではありません。それは、海外という不確実な環境で戦う社員に対し、「会社が医学的なバックアップを用意している」という確かな安心感を与えるインフラ整備です。自社の規程に、産業医体制を補完する「専門医の知見」をどう組み込むべきか。今こそ、2026年度の安定した海外事業に向けて、体制を再確認してみてはいかがでしょうか。

【記事監修】医師・株式会社Medifellow 代表取締役 丹羽 プロフィール

丹羽 崇 

2005年愛知医科大学医学部卒業。2017年神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科および倉敷中央病院呼吸器内科にて臨床研究管理者・呼吸器インターベンション指導医を兼務。総合内科専門医・指導医、呼吸器専門医・指導医、気管支鏡専門医・指導医などの資格を有するほか、世界肺癌学会、欧州呼吸器学会、米国胸部学会など国内外学会での活動実績や受賞歴を複数有する。現在も診療ガイドライン作成委員や厚生労働省難病指定疾患研究班委員を務め、胸部血管内治療や気管支鏡診断・治療の発展に努めている。

オンライン診療・医療相談

海外赴任者の健康管理に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 産業医がいるのに、なぜ外部の「専門医相談」が必要なのですか? 

A. 産業医と専門医では役割が異なるためです。産業医は「企業側の労務管理」に重きを置き、専門医は「個人の具体的な症状解決」に重きを置きます。例えば、海外で皮膚病になった際、産業医に相談しても最終的には「現地の皮膚科へ」という助言になりますが、専門医(皮膚科医)がいれば、写真を見て具体的なケア方法や薬の妥当性を日本語でアドバイスできます。この「具体的解決」が駐在員の安心を生みます。

Q2. メンタルが強い社員を選定するための、有効なテストはありますか? 

A. 心理テスト等で一定の傾向は把握できますが、「絶対」はありません。大切なのは「選定」の精度を上げることよりも、「どんなにタフな人でも不調になる」という前提で、不調の兆しを早期にキャッチする仕組みを作ることです。いつでも匿名性を持って専門医に相談できる環境があれば、重症化する前に手を打つことが可能になります。

Q3. 健康管理規程を書き換えるのは大変です。規程を変えずに導入できますか? 

A. 実務上「付帯サービス」や「福利厚生制度」として先行導入し、次回の規程改定時に追記するというステップを踏む例も見受けられます。ただし、最終的に規程に盛り込むことで、会社としての「安全配慮義務の履行」を対外的に証明しやすくなります。

Q4. 帯同家族へのサポートは、どこまで会社が負担すべきでしょうか? 

A. 近年のトレンドとしては、「本人と同等の医療サポート」を提供する企業が増えています。家族の体調不良や現地への適応失敗が、結果として本人の帰任判断に直結するケースが多いため、家族のケアを厚くすることは事業を守ることに直結するためです。

Q5. 専門医による医療相談により、早期帰任は減りますか? 

A. 確実ではありませんが、低減する可能性はあります。不調の多くは「孤独」と「未知の症状への不安」から増幅されます。「いつでも日本の専門医に相談できる」というセーフティネットがあるだけで、過度な不安やストレスが抑えられ、現地の生活に早期に適応できる一助となることが期待されます。

編集者プロフィール

小原万美子
小原万美子
「一人ひとりの心と役割が輝く社会を創る」ことをミッションに、マーケティング、カスタマーサクセス(コミュニティ)、PRの一貫したコミュニケーション作りを担う。大阪教育大学卒業。卒業後は教育事業会社で広報・採用を行い、その後飲食店向けFinTech&SaaS企業にてProductPR、カスタマーサクセス、コミュニティ運営を担当。同時に、日本の誇れる医療と安心を世界中に届けるビジョンに共感し、広報担当として株式会社Medifellowに参画。広報、マーケティング、グラフィックデザインを行っている。
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