アメリカの教育は何がすごい?21世紀を生き抜く教育〜STEM、SELなど〜【留学・海外移住】

アメリカの教育

※本記事の最終更新日 2024年2月
※他のWebサイト等の情報を参照、一般的な情報提供での掲載です。

海外留学の人気国ランキングで2位となっているアメリカ。人気の理由として、教育のレベルはもちろん、ビジネスやダンスなどの芸術、あらゆる分野の最先端である環境に触れられるからだと言われています。アメリカは、2002年より、「21 世紀スキル協同事業(P21)」が発足、21世紀を生き抜くための教育フレームワークが多くの州で取り入れられています。そのうえで、近年言われているSTEM教育やSELなどの教育が行われています。このように、アメリカで取り組まれている教育について、本記事でまとめます。

アメリカの教育は何がすごい?〜2002年に提唱された21 世紀スキルとは?〜

アメリカの教育では、未来の社会で生き抜くための本質的なスキルを身につけることが重視されています。

2002年に「Partnership for 21st Century Skills (P21) 」という非営利団体が発足。21 世紀社会において労働者及び市民として成功するスキルを 21 世紀スキルと定め、アメリカの多くの州でこの教育フレームワークが取り入れられています。

設立時はアメリカの連邦教育省が 150 万ドルを提供、アップル、シスコ、デル、マイクロソフトといった情報技術系企業を中心に、教育界からは全米教育協会(National Education Association)が参画しました。

アメリカの教育:21世紀型スキルのフレームワーク

P21は、通常の教科の学習に、以下の3つの21世紀スキルを盛り込むことを求めています。

  • 学習と変革スキル
    これは、以下の3つの要素から構成されます。
    ①創造性と革新
    ②批判的思考力と問題解決力
    ③コミュニケーションと協働
(引用:JICA 国際協力機構 第 6 章 アメリカの教育課程
  • 情報・メディア・テクノロジーのスキル
    テクノロジーやデジタルメディアの発達に伴い、これらをツールとして使いこなす力が重視されています。上記の学習と変革を補完するスキルとされています。
(引用:JICA 国際協力機構 第 6 章 アメリカの教育課程

  • 生活とキャリアのスキル
    複雑に変化する21 世紀の社会を生き抜くうえで、上述の学習スキルや情報スキル以上に、前提として生きていくためのスキルが重要だと言えます。
(引用:JICA 国際協力機構 第 6 章 アメリカの教育課程

P21のフレームワークは、アメリカの多くの州や教育機関で採用されており、P21は、世界中の教育関係者や政策立案者に影響を与えています。

このように、アメリカでは、世界を牽引する企業が主導し、時代の変化を見据えた教育を20年以上も前から行ってきたことがわかります。

(参照:JICA 国際協力機構 第 6 章 アメリカの教育課程、Wikipedia 21st century skill

21世紀を生きる子どもたち

アメリカの教育は何がすごい?〜最先端を学ぶSTEM教育〜

アメリカの州・教育機関で取り入れられている教育課程について説明しましたが、具体的に、どんな教育が近年人気となっているかをご紹介します。

STEM教育とは?

STEMとは、「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」の頭文字をとった言葉で、4つの教育分野を総称したものです。科学やITの高いスキルを備え、今後のIT社会・グローバル社会に適応できる国際競争力を持った人材を育成することを目指す教育手法です。

1990年代のアメリカが発祥とされていますが、アメリカでは、2009年に当時のオバマ大統領が演説で優先課題と強調したことで注目を集めるようになったと言われています。2013年にはSTEM教育に関する5か年の戦略計画が発表され、年間30億ドルの巨額の予算を投じ、国家戦略として全米でSTEM教育のプログラムが推進されています。

日本でも注目はされているものの、世界的に遅れを取っていると言われています。

アメリカの学校教育では、以下のような方法でSTEM教育が行われています。

  • 専門科目:科学、技術、工学、数学などの専門科目を設置
  • 統合型学習: 複数の科目を統合したSTEM教育科目
  • プロジェクト型学習: 実際に課題に取り組みながら学ぶプロジェクト型学習
  • 課外活動::STEM関連のクラブやサークル活動

アメリカSTEM教育の事例

  • アイオワ州
    アメリカ アイオワ州では、2011年に副知事を共同議長として、 州政府、産業界、教育指導者から構成されるアイオワ 知事のSTEM 教育諮問委員会(Iowa Governor’s STEM Advisory Council)を設置して、子ども達のSTEM 分野 への興味・関心の喚起と学力の向上などに取り組んでいます。
    (参照: 日本科学教育学会 アメリカにおける STEM 教育推進の活動事例報告
  • オレゴン大学
    研究と学生へのトレーニングを組み合わせた、発見を重視したプログラムが特徴で、それぞれの分野で新しい知識を創造し、世界を広げています。 自然科学分野のプログラムとしては、生物学、化学と生化学、コンピュータと情報技術、データ科学、地球科学、学際科学、人体生理学、数学、神経科学、物理学、心理学など幅広い分野が提供されています。
    (参照:海外進学・留学ラボ 世界の大学が重視する海外「STEM教育」最新事情
STEM教育

アメリカの教育は何がすごい?〜社会情動学習 (SEL)〜

社会情動学習 (SEL) は、子どもや大人の感情を認識してコントロールすることで、成果を上げ、合理的な意思決定につながる健全なパートナーシップを構築することを目的とした学習法です。

  • 自己への気づき
    自分の感情に気づき、また自己の能力について現実的で根拠のある評価をする力
  • 自己のコントロール
    他者の感情と多様性を理解し,良好な関係を持つことができる力
  • 他者への気づき
    自分と同じあるいは異なる背景や文化をもつ人々の視点を持ち、物事を適切に処理して目標を達成する力
  • 対人関係
    周囲の人との関係において情動を効果的に処理し、健全で価値のある関係を築き、維持する力。
  • 責任ある意思決定
    全ての要因や選択肢、結果を十分に考慮して意思決定を行い、自己の決定に責任をもち、他者を尊重する力

これらを実践するための知識や態度、スキルを身につけて効果的に利用できるようになる過程だとされています。アメリカでは基本的に小中高校での実践がされています。

アメリカのNPO法人であるCASELは、数々のSELプログラムについて、科学的根拠にもとづく効果を重視し、それを連邦・州・各地の教育委員会や教育団体に働きかけて、実践と継続を図ることを目的として活動しています。

また、近年アメリカでは、子どもの環境という点では保護者や教師、地域関係者等をすべて考慮する必要があると言われており、教師だけでなく、コミュニティや学校外施設等でも実践されているそうです。大人も巻き込んだSEL教育についても、日本は遅れを取っていると言われています。

世界的にも、SEL市場は2027年まで年率25%で成長する見込みと言われています。

(参照:PR TIMES 社会性と情動の学習(SEL)の世界市場は2027年まで年率25%で成長する見込み、福岡教育大学学術情報リポジトリ「社会性と情動の学習」(SEL)と教育的公正

終わりに

世界を牽引するアメリカの教育は、国土の広さ、人種の多様性ゆえに、いかに人と協働し最大限の成果を出すか、そのための考え方とツールの使い方をいかに幼少時代から環境の中で身につけさせるかに注力されているのだと考察されます。

アメリカではさまざまな分野で最先端を学び実践する環境がたくさんあるからこそ、可能であれば早期から最適な生き方やキャリアを自ら選択していけるように、他者と自分への理解を大事にし、言語化し、自ら取捨選択しモチベートする、人間の行動心理を理解した教育が行われているとわかりました。

教育において、民間企業・団体と教育と政治の結びつきの重要性も伺えます。

グローバルな世界でどう自分が価値を発揮し、幸福を得ていくのか、アメリカという環境で学ぶことの魅力は大いにあるのではないでしょうか。

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編集者プロフィール

小原万美子
小原万美子
人と組織の可能性が最大化する環境を拡げることをミッションに広報・マーケティングを行う人間。大阪教育大学卒業。卒業後は教育事業会社で広報・採用広報を行い、その後飲食店向けFinTech&SaaS企業にて広報を担当。同時に、日本の誇れる医療を世界中に届けるビジョンに共感し、広報担当として株式会社Medifellowに参画。記事制作、マーケティング、SNS運用、グラフィックデザインを行っている。