海外駐在員の派遣、留意すべき法律と安全配慮義務

駐在員を海外に派遣する際に、生活面や仕事面、医療面などで安全安心の環境を提供することが大切ですが、その中で、リスクヘッジも含め企業が留意すべき法律はあるでしょうか?

例えば日本では、法律で「安全配慮義務」として従業員の心身の安全を確保することが義務付けられており、不履行と認められた場合は刑事、民事上の責任を問われることとなります。

そこで今回は、駐在員派遣に関わる可能性のある法律と、安全配慮義務が示す内容についてご紹介いたします。

駐在員を海外に派遣する場合、適用されるのは現地国の法律?日本の法律?

駐在員を海外に派遣した場合、現地国の法律が適用される可能性があります。
ただし、駐在員が日本国籍を保持している場合、日本の法律でも適用される可能性があります。
これは、日本が属人法をもつ国であるためです。

属人法とは、個人の法律関係は、その個人の属する国の法律に従うと規定する法律体系です。
したがって、駐在員が日本国籍を保持している場合、駐在員は現地国の法律も日本の法律も適用される可能性があります。

駐在員が出張なのか転籍なのか出向なのかなど、国内外のどの事務所に所属していることになっているかでも異なると言われており、事前に確認しておくことが必要です。

安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは、企業や団体が従業員や関係者の安全を確保するために負うべき法的・倫理的な責任です。

駐在員と企業の間では、海外派遣を機に「病気を発症した」「持病が悪化した」「メンタルを病んだ」などの安全配慮義務に関するトラブルが多くなっています。

この安全配慮義務は、労働安全衛生法や労働基準法などの労働法規や、地域や国によって異なる法的枠組みによって定められています。

具体的には、労働契約法第5条には「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」(安全配慮義務)と明記されています。

具体的な項目としては、

  • 安全な労働環境の提供
  • 適切な訓練や指示の提供
  • 安全装置の設置
  • リスク評価や予防策の実施

などが挙げられます。

労働者にも義務がある

安全配慮義務は使用者に課せられていると同時に、労働者には自己保健義務が課せられています(労働安全衛生法第26条)。具体的には、健康異常の申告や健康管理措置への協力が義務となっています。

たとえば、管理監督者が、健康面や業務面で気になる部下と面談をしようとする場合、気になる健康の問題が業務に支障が来しているようであれば、上司が行う健康管理措置への協力が労働者の義務となります。

(参照:厚生労働省 管理職が知っておくべき安全配慮義とは?、厚生労働省 労働契約法のあらまし)

刑事上の責任が問われるケースも

労働安全衛生法では、事業者に対して労働災害防止の事前予防のための安全衛生管理措置を定め、これを罰則をもって遵守を義務づけています。
労働災害の発生の有無を問わず、これを怠ると刑事責任が課せられます。

また、業務上労働者の生命、身体、健康に対する危険防止の注意業務を怠って、労働者を死傷させた場合、業務上過失致死傷罪(刑法第 211 条)に問われることになります。

駐在員を海外に派遣するにあたり、駐在員が心身ともに健康で過ごせる環境を整えることが法律で定められているものの、具体的な内容は各企業に委ねられており、互いに不満なく生活、管理できるようコミュニケーションをしっかり取ることが大切です。

他にも、残業などの労働条件やデータセキュリティ関連の法律、差別に関する法律なども国によって異なり、赴任者が法律を犯した場合に会社も一部責任を負う可能性もあります。

派遣前に、駐在国の法律や、法律が適用される国(責任の所在)、労働条件等を双方で同意し明らかにしておくことが大切です。

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編集者プロフィール

小原万美子
小原万美子
人と組織の可能性が最大化する環境を拡げることをミッションに広報・マーケティングを行う人間。大阪教育大学卒業。卒業後は教育事業会社で広報・採用広報を行い、その後飲食店向けFinTech&SaaS企業にて広報を担当。同時に、日本の誇れる医療を世界中に届けるビジョンに共感し、広報担当として株式会社Medifellowに参画。記事制作、マーケティング、SNS運用、グラフィックデザインを行っている。