イギリスの医療費は無料?イギリスの医療費や医療事情について
JETRO2022年の調査では、今後駐在員の増減予想について「減少」と回答した企業割合が少なかったイギリス。2022年当時の営業利益見込みも、黒字予想の企業が73.0%でした。
そんなイギリスでは医療費が無料と言われていますが、その理由やイギリスの医療保険制度、外国人への適用条件はどうでしょうか。
無料で受診するにあたって、医療機関の制限や受診の混雑状況など、それぞれのメリットデメリットも含め、イギリスの医療費にまつわる事情についてまとめます。
Contents
■イギリスの医療費が無料になる理由
・イギリスの税金で支払われる国民保健サービス
イギリスの医療サービスには2種類あり、医療費が無料になるのは「国民保健サービス(National Health Service 、通称NHS)」を利用した場合になります。
この国民保健サービスは税金で運営されており、イギリス国民の多くがこれを利用して病院を受診しています。
なお、イギリスの公立病院を受診する際は医療費は原則無料ですが、処方箋や歯科診療など一部のサービスには一定医療費がかかります。
・イギリスにいる外国人も医療費は無料になる?
イギリスの通常の居住者(Ordinary resident)とみなされる場合、原則的に外国人でも国民保健サービスに加入することができ、医療費は無料となりますが、イギリスへの短期滞在者や旅行者には適応されません。
こちらは後述 ■イギリスの病院の受診方法について でご説明します。
・国民保健サービスを利用するための税金の支払いは?
イギリスでは、保険料として、16歳以上の就労者は、National Insurance Contribution と呼ばれる保険料の支払いを求められます。
またイギリスに6ヶ月以上滞在する外国人の一時的滞在者(non-EEA migrants )に関しては、保健サービスの査証取得・延長時に利用料の支払いを求められます。
■イギリスの国民保健サービスを利用するメリットとデメリット
ーメリットー
・医療費が原則無料
・小児定期予防接種が無料
イギリスで定められた小児定期予防接種は、すべて無償で提供されています。
※日本の定期予防接種に含まれるもののうち「水ぼうそう(水痘)」と「日本脳炎」は含まれていません。
・救急医療費も原則無料で受けられる
イギリスでは、重篤な救急患者に対する救急医療の提供は国民保健サービスでのみ行われており、医療費が無料になります。そのため、救急医療は国民保健サービスへの加入が無い人に対しても医療費は無料となりますが、急性期以降の治療については、登録が無い場合、医療費支払いが必要になる場合があります。
ーデメリットー
・恒常的に病院が混雑している
イギリスでは、まず病気にかかったらGP(家庭医、総合診療医)を受診することになるため、病院が恒常的に混雑しており、迅速な予約は取りにくいのが現状です。また、市販薬で対処可能な症状については薬が処方されず、薬局で薬剤師に相談するよう指示される場合もあります。
・専門的な医療を受けにくい
GPが「専門的な診察が必要」と判断して専門医に紹介した場合でも、緊急性が低いと判断されると、実際に専門医を受診できるまでに数か月の待機を余儀なくされるのが一般的です。
・歯科診療へのアクセスが困難
国民保健サービス歯科は予約が極めて取りにくく、また、行える治療内容にも制約があります。
■イギリスのプライベート医療サービス
イギリスの医療サービスの2つめは、私立病院を利用するプライベート医療サービスです。医療費は無料ではなく、すべて患者の自己負担となります。
イギリスの旅行者や短期滞在者は、緊急時を除いて上記の国民保健サービスを利用することは難しいため、基本的にはプライベート医療サービスを利用することになります。
この場合、必ずしも初めにGPにかからないといけないわけではないため、直接専門医に連絡を取って診療を受けることも可能です。
イギリスには日本人医師の勤務するクリニック、日本人歯科医師の勤務する歯科医院もあります。
■イギリスのプライベート医療サービスを利用するメリットとデメリット
ーメリットー
・短時間で診察を受けられる
・短期間で専門医を受診できる
・自由に病院や専門医を選んで受診できる(GPからの紹介が必須ではない)
・受付から診療まで、すべて日本語で対応している病院が複数ある
ーデメリットー
・全額自己負担のため医療費が高くなる
■イギリスの病院の受診方法について
1)国民保健サービスを利用して医療費を無料にする場合
まずはGP(家庭医、総合診療医)を受診します。自宅近くのGP診療所に行き、患者登録を行います。専門医を受診したい場合は、GPからの紹介を受けて病院の専門医を受診します。
ただし、この際、国民保健サービスの加入が必要なため、病院から「合法的にイギリスに滞在していて、英国に生活の拠点がある」との判断を受けなければならず、これが認められなかった場合にはプライベート医療(民間病院)を受診するよう求められます。
2)自費でプライベート医療サービス(民間病院)を受診する場合
受診を希望する病院に直接連絡を取ります。直接専門医に連絡を取って受診することもできます。日本語で対応しているイギリスの民間病院も複数あります。
(参照:外務省 世界の医療事情 イギリス)
■イギリス医療費(イギリス・ロンドン)
イギリスの医療費 | 日本の医療費 | |
救急車の料金 | ①公営:無料 ②民営:通常利用しない | ①無料 ②通常利用しない |
初診料 | 16,200円~27,000円 | 2,820円 |
病院部屋代 (1日当たり) | ①個室:135,000円~202,500円 ②ICU:405,000円~540,000円 | ①個室:30,000円~100,000円 ②ICU:80,000円~100,000円 |
虫垂炎手術の治療費・医療費 (入院日数) | 945,000円~1,350,000円 (2~3日) | 600,000円 (4日) |
骨折時の治療費・医療費 (橈骨末端閉鎖性骨折) | 135,000円~202,500円 | 20,000円 |
上記の様に、イギリスは日本よりも医療費が高くなることがわかります。
■イギリス医療費(救急や事故などの場合)
内容 | 支払額(円) |
熱・咳が続き受診。E型肝炎と診断され43日間入院・手術。家族が駆けつける。 | 5,600,000 |
ホテルのロビーで意識を失う。脳梗塞と診断され25日間入院。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添い医療搬送。 | 19,278,865 |
路上で暴漢に襲われ意識不明となる。頭部外傷と診断され41日間入院・手術。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添い医療搬送。 | 11,244,970 |
イギリスに向かう途中、機内食が喉に詰まり、搭乗していた医師の治療を受ける。家族が駆けつける。 | 3,575,992 |
気分が悪くなり意識を失う。一過性意識障害と診断され12日間入院。家族が駆けつける。医師・看護師が付き添い医療搬送。 | 4,534,565 |
ベッドから降りる際に転倒し手と足を強打。上腕骨・大腿骨頸部骨折と診断され17日間入院・手術。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。 | 4,970,000 |
バスルームで転倒し胸を強打、翌日観光中に顔色が悪くなり受診。血気胸と診断され3日間入院・手術。家族が駆けつける。 | 5,840,000 |
イギリスでは、国民やイギリスに居住している外国人であれば、医療費は税金(保険料)で支払われ医療費無料で公的な医療サービスを受けることができます。
ただし、イギリスに短期滞在している外国人や、より専門的で高度な医療を自由に選んで受けたい場合、日本語対応が充実した病院を受ける場合、早く病院を受診したい場合などは、自費でプライベート医療サービスを受けることが良いと考えられます。
イギリスに長期滞在する場合は、国民保健サービスを利用しながら、状況に合わせて自費で民間医療サービスを受診することになると考えられます。
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編集者プロフィール
- 人と組織の可能性が最大化する環境を拡げることをミッションに広報・マーケティングを行う人間。大阪教育大学卒業。卒業後は教育事業会社で広報・採用広報を行い、その後飲食店向けFinTech&SaaS企業にて広報を担当。同時に、日本の誇れる医療を世界中に届けるビジョンに共感し、広報担当として株式会社Medifellowに参画。記事制作、マーケティング、SNS運用、グラフィックデザインを行っている。
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