上海駐在 コロナ禍中国・上海の医療・生活事情【愛知県庁 林秀幸様の事例】
現地での教育、医療、文化など生活に関する不安や課題、生の声を連載するシリーズ「海外駐在員の声」。愛知県庁から中国・上海で新型コロナ流行下での駐在経験がある林秀幸様にお話を伺いました。
【凡例】
●:インタビュアー池田宇大
■:林秀幸様
※記事内に記載のある具体的なサービス・製品名等はあくまで取材の中で個人の見解を伺ったものであり弊社が推奨等を行う趣旨ではありません。正確な情報については関連する企業・法人・団体等へお問合せ下さい。
Contents
●林秀幸様の場合、どのような経緯で中国・上海駐在に至りましたか?また、過去に駐在や留学など海外生活の経験はありましたか?
■以前在籍の愛知県産業立地通商課(※1)は、海外から愛知県への企業誘致や、愛知県から海外への日系企業進出の支援に取り組んでいる課になります。同課には、中国・上海とタイ・バンコクに各々上海産業情報センターとバンコク産業情報センターを構えています。上海産業情報センターへの駐在員を愛知県庁内で公募しており、自身の年齢も鑑み新たなチャレンジをしたく、応募、選考を経て赴任・駐在に至り、2019年から3年間上海駐在しました。
過去に駐在や留学などの海外生活経験はありませんので初めての駐在先が上海です。また、妻や子供、家族帯同での上海駐在だったのですが、同様に経験はありません。
※1 参考:愛知県産業立地通商課
●ご家族含め、初めての海外駐在が中国・上海となり、現地での生活でご苦労されたのではないですか?
■上海は大都市で日本国内に例えると群馬県くらいの面積規模の中に約2,500万人が住んでいる場所です。そのうち上海の日本人は、10年前のピーク時には約6万人、それ以降は減少を続けたのですが、それでもなお上海に約4万人おります。日系企業の進出企業数も約10,000社と、日系企業進出先で世界一のため、日本人コミュニティが充実している印象で、現地での情報収集等にはそれほど困りませんでした。(※2)
※2 参考:JETRO『上海市概況』P11 進出日本企業(拠点)数
また、上海は中国の国際都市として環境が整備されており、新型コロナ流行により見直されたところもありますが、トイレも綺麗で衛生状態も良く、住みやすい都市だと感じました。上海には日本食レストランも3,000店以上(※3)あり、日本人にとって暮らしやすい印象の都市でした。
※3 参考:JETRO『中国・華東地域における日本産食品市場の現状と今後の展望』P13
買い物なども、上海では至る所でスマホの電子決済が使えるので、現金を持ち歩く必要が全くなかったです。スマホに依存し過ぎているためバッテリーは不安ですが、上海の街の至る所にシェアバッテリーが普及していました。上海では、シェアサイクルも普及しており、中国の人にとっては、所有するのではなく、借りて返すと言うことが当たり前になっているかも知れません。
また、上海市内を走っている車は電気自動車やハイブリッド車が多く、環境性能の良さそうな高級車が多い印象を受けました。バイクも電動バイクが主流になっていますが、バッテリーの節約のためか夜中にライトを点灯せず走行する人もいて、衝突しそうな危ない思いも何度か経験しました。
習近平国家主席が、カーボンニュートラルを目指すと表明(※4)してますが、大気や水の汚染も環境規制の強化により年々改善されてきており、長江の水質は河イルカが戻ってくるくらい改善が進んでいるという現地の報道もありました。
※4 参考:JETRO『中国 「カーボンピークアウト・カーボンニュートラル」 政策概要及び中部地区の実行現状について(2022年11月)』
一方で、生活で使う中国語に苦労しました。仕事では、上海現地スタッフのサポートがあるため良いのですが、普段の生活では、困った時には中国語で話さなければならず、慣れるまで大変でした。
●上海駐在中、どのような地域に住んでいましたか?
■日本人がいる場所は、上海の浦東と虹橋と言う地域があります。浦東は金融系の企業や大手企業が集まっている新興地域で、虹橋は古くから日系企業が集まっている地域です。私は虹橋に住んでおりました。上海には生徒が1,000人規模の日本人学校が二つあり、そこに子供を通わせていました。新型コロナの流行後は、休校やオンライン授業への切り替えなどの影響により、日本へ本帰国した生徒も多く、生徒数が大きく減少していました。
●上海駐在中、病気や病院の受診で困ったケースはありましたか?
■子供の近視が気になり眼科を受診したことがありました。上海には駐在員向けの病院もあるため、海外旅行保険・駐在員保険にさえ加入すれば比較的大丈夫な印象でした。
また、私は一度、北京に出張中に体調が悪くなり病院を受診したことがあります。北京は日本人が7,000人程度だからか日本人向けクリニックが少なく、同行の現地スタッフに外国人を診れる病院を探してもらい受診しました。病院にいくと点滴を打たれたのですが、中国の病院ではどうやらまずは点滴を打つ文化があるようです。漢方で『病気の時は水を飲め』と言う教えがあるようなのですが、そういった影響なのかも知れませんね。とりあえず点滴を打って様子を見る、というのが常道のようで、実際私もそれで回復しました。
それ以外に、病気にかかり困ることはなかったものの、日常の健康管理は心配でした。中国では、生活も不規則になりがちで、外食中心になり、お酒をたくさん飲む文化があったり食生活の乱れを感じていたためです。知り合いの中には、生活の乱れが原因で体調を崩し本帰国に至った駐在員の方もおり、私も定期健診で悪い数値が出ないかと心配しておりました。
●中国上海への駐在中に新型コロナ流行の初期を経験していると思いますが、大変だったのではないでしょうか?
■新型コロナの発生当初は非常に緊張しました。まだ新型コロナがどのようなものか情報がない時に、感染したら酷い事態になることを想像、恐怖を感じました。ただ、その後、ゼロコロナ政策が功を奏し、一旦、中国内は新型コロナが沈静化、過去のものになったような状況になりましたが、その後、オミクロン株が出てきて再び拡がりを抑えきれなくなりました。対策が強化され、PCR検査で陽性が出ると本人は施設・病院へ隔離され、濃厚接触者は自宅隔離となる措置が講じられていました。幸い、2022年3月、上海市が翌月から2か月間にわたってロックダウンされる直前に本帰国することになりましたが、当時、現地に残っておられた方は本当に大変だったと聞いております。
林秀幸氏プロフィール
1995年、愛知県庁入庁。2019年3月から2022年3月まで愛知県上海産業情報センター所長として中国上海市に駐在。現在、愛知県スタートアップ推進課担当課長。
取材担当者
池田宇大
株式会社Medifellow
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編集者プロフィール
- 岐阜薬科大学薬学部卒、薬学士。医療機関の経営コンサルティングを経験。大学病院や自治体病院、公的病院の経営改善に従事。その後、HR業界で採用支援コンサルティングを経験。海外駐在員や日本人現地採用、外国人の転職などクロスボーダーの転職・就職支援に従事。
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