【医師監修】2026年 補助金活用・介護DXで「辞めない職場」を作る方法 │ テクノロジーが救う現場のメンタルケア

介護DXとメンタルヘルスケア

監修:医師・株式会社Medifellow 代表取締役 丹羽 崇 

最終更新:2026年4月

「介護職員の離職率が高い」と言われ続けてきた介護業界ですが、実は2024年度の最新データでは離職率12.4%と、全産業平均14.2%を下回る水準(※1)にまで改善しています。にもかかわらず、現場ではまだ人が辞め続けています。その理由はどこにあるのでしょうか。

答えのひとつは、数字に表れにくい「現場の疲弊」にあります。夜間の急変を一人で判断する孤独感、終わらない記録業務、残業があたりまえになった生活。こうした蓄積がじわじわと職員を追い詰め、ある日突然「もう限界です」という退職につながるのです。

本記事では、介護現場の離職構造を医師の視点から読み解きながら、2026年度に活用できる補助金・介護DX(デジタルトランスフォーメーション)を使って「職員が辞めない職場」を実現するための具体的な方法をお伝えします。

「離職率は低下した」のに、なぜ人は辞めるのか。数字の裏に隠れた「3年未満離職」の構造

介護職の離職率は改善傾向にありますが、離職者のうち約6割が勤続3年未満という現実があります(※1)。採用→育成→離職というサイクルが繰り返されており、ベテランの絶対数が増えにくい構造的な問題が続いています。

離職の表向きの理由として多く挙げられるのは「職場の人間関係」「収入への不満」「不規則な勤務」などです。しかし、この背景には医学的に見て重要な「心理的疲弊の蓄積」があります。

▼ 医師監修コメント:介護職の「燃え尽き症候群」を医師の視点から

介護職に特有なのは「感情労働の連続性」です。身体的なケアに加え、認知症の方の言動への対応、ご家族からの要求、夜間の急変判断——こうした感情的・認知的負荷が重なると、医学的に「慢性的なストレス反応」が蓄積します。特に夜勤での孤立した急変対応は、コルチゾール(ストレスホルモン)の慢性的な上昇を引き起こし、睡眠障害や意欲低下を招きます。これがバーンアウト(燃え尽き症候群)の引き金となり、突然の退職につながるメカニズムです。「辞めたい」というサインを出す前に、すでに限界を超えているケースが少なくありません。

「辞める理由」の本質は何か

介護施設の施設長・管理者が施策を考える際、「給与を上げれば辞めない」「シフトを改善すれば定着する」と考えがちです。しかし、給与水準が向上した近年でも離職が続いているという事実は、それだけでは不十分であることを示しています。

職員が本当に辞めたくなるのは「この職場で働き続けることへの見通しが持てなくなったとき」です。毎日の業務が孤独で、夜間に頼れる相手がなく、記録で帰れない。そうした「今日も明日もこれが続く」という閉塞感こそが離職の核心にあります。

夜間の介護施設

「1人辞めるコスト」を把握する——DX投資と比較してみると

「DXに投資する余裕はない」と感じている施設長の方も多いと思われます。しかし、その判断の前に「1人の職員が辞めた場合のコスト」を試算してみることを推奨します。

1人離職すると、いくらかかるか

介護職員の採用・育成にかかるコストを分解すると、次のように整理できます。

コスト項目内容目安金額
採用コスト(外部)求人広告・人材紹介手数料など紹介会社経由は年収の30〜35%が相場30〜100万円
採用コスト(内部)採用担当者の工数・面接・説明会・入職準備の人件費換算10〜20万円
教育・OJTコストOJT担当者の指導工数(3〜6か月)研修費・資格取得支援費20〜40万円
習熟期間の損失一人前になるまでの生産性低下分おおよそ3〜6か月間が目安10〜20万円
合計(目安)施設規模・採用手法・習熟期間によって変動する70〜180万円
※ 採用コストはカイゴペディア・R4採用支援等の複数調査をもとにした目安値です。紹介会社経由の場合は100万円超になるケースもあります。教育コストはOJT担当者の人件費換算を含みます。施設の状況に合わせて読み替えてください。

ここで重要なのは、「よく見えるコスト(求人広告費・紹介料)」は氷山の一角であるということです。採用担当者の工数、OJT指導者が通常業務を止めて指導に充てた時間、新人が一人前になるまでの生産性低下。こういった「見えにくいコスト」が積み重なっています。

介護DXの自己負担額と比較すると

補助金を活用してICT・見守りシステムを導入した場合、施設が実際に負担する金額はどのくらいでしょうか。

補助制度対象補助率上限額自己負担の例
介護テクノロジー導入支援事業(令和8年度)介護ロボット・ICT・見守りシステム等最大3/4パッケージ型:最大1,000万円400万円導入→自己負担100万円
IT導入補助金(経済産業省)介護ソフト・業務管理ツール等最大2/3上限450万円(枠による)150万円導入→自己負担50万円
業務改善助成金(厚生労働省)賃上げ+設備投資の同時実施3/4〜9/10600万円施設規模・条件による
(※2)(※3)(※4)※補助率・上限額は年度・都道府県・施設規模によって変わります。申請前に都道府県の担当窓口・最新公募情報を必ず確認してください。交付決定前の発注は原則補助対象外です。

ポイント:「1人の離職コスト」と「DX自己負担」は同水準

補助金活用後のDX自己負担(例:100万円前後)と、職員1人の離職コスト(70〜180万円)はほぼ同水準です。離職を1人でも防ぐことができれば、それだけでDX投資は回収できる計算になります。

施設規模別・離職コストの早見表

自施設の規模感でイメージしやすいよう、年間の離職コストを試算した目安を示します(離職率12%(※1)、1人あたりのコストを100〜150万円で計算)。

施設規模職員数(目安)年間離職者数年間離職コスト(概算)DX自己負担(補助率3/4の場合)
小規模20人2〜3人200〜450万円/年25〜50万円
中規模50人6人600〜900万円/年100万円前後
大規模100人12人1,200〜1,800万円/年250万円前後
※ あくまでも試算の目安です。離職率・採用手法・補助金申請状況によって実際の金額は変わります。

介護DXで「辞めない職場」を作る——現場が変わる3つの仕組み

介護DXとは、デジタル機器を導入することそのものではありません。データとテクノロジーを使って「業務のやり方・組織のあり方・ケアの質」を変革することです。離職防止の観点では、特に以下の3つの仕組みが有効です。

① 記録・申し送りのデジタル化——「残業を生む仕事」を減らす

介護現場での残業の多くは、手書き記録・転記・申し送り準備に費やされています。これをICTで解消することが第一歩です。

厚生労働省の生産性向上ガイドラインでは、ICT導入によって記録・申し送りにかかる間接業務時間を削減できるとされており、削減された時間が直接ケアや残業削減に活用されています。「記録のために残業する」という状況がなくなるだけで、職員の疲労感・閉塞感は大きく変わります。

② 見守りセンサーの導入——「夜間の孤独な判断」をなくす

特に夜勤帯での離職リスクを高めているのが、「一人で急変を判断しなければならない」という孤立感です。見守りセンサーを導入することで、この問題に対処できます。

センサーが室内の状況をリアルタイムで把握し、異変があった場合のみスマートフォンに通知が届く仕組みにより、不必要な巡回が減り、必要なときだけ適切に対応できるようになります。ある施設では見守りシステム導入後に訪室回数が最大25%減少し、月平均3時間の残業削減が実現しました。

さらに、「スマホで記録・見守りセンサー完備」という環境は、若手求職者への強力なアピールにもなります。

③ オンライン医療相談の活用——「緊急時の孤立」に終止符を打つ

見守りセンサーで「状態の変化」がわかります。しかし「これは受診が必要か?」「今すぐ救急を呼ぶべきか?」という医療的な判断は、テクノロジーだけでは解決できません。

そこで有効なのが、オンライン医療相談を「医療的判断の相談窓口」として活用するアプローチです。厚生労働省のオンライン診療指針では「診療前相談」として位置づけられており、都道府県への届出も不要で、法的手続きの負担が最小限のまま導入できます。(※6)

同時並行でオンライン診療届出を進め、診療が必要と判断された場合にスムーズに「オンライン診療」へ切り替え、その場で医師による診断や処方、さらには往診の要否まで判断できる体制を整えることが理想的です。これにより、職員は「医師のお墨付き」を得た状態で動くことができ、心理的重圧から解放されます。

比較項目オンライン診療(診察)オンライン医療相談(診療前相談)
主な目的診察・処方受診の要否・緊急性の判断
法的手続き都道府県への届出が必要届出不要
看護師の同席望ましい不要
主な活用場面慢性疾患の定期受診など夜間・休日の急変時の判断
夜間の対応協力医の体制による365日いつでも相談可能

参考:https://medifellow.jp/news/blog/5872

オンライン医療相談サービス「Medifellow」では、33科・500名以上の専門医体制で365日いつでも対応しており、介護施設での夜間急変時の判断サポートに活用されています。「夜間でも専門医に相談できる」という安心感は、夜勤担当者の心理的負担を大きく軽減し、職場定着に直結します。

介護施設のオンライン医療相談

▼ 医師監修コメント:「孤独な判断」が職員の心を削る

医療・介護の現場において、「孤独な判断を強いられること」は精神的負担の大きな要因のひとつです。人は「自分が正しい判断をできているかどうか確信が持てない」状態が続くと、慢性的な不安とストレスにさらされます。これは夜勤担当者が「今これって救急車を呼ぶべき?」と一人で悩む状況そのものです。テクノロジーは「状態の可視化」によってこの不安を軽減し、相談できる体制の整備が「孤独な判断」を「支えられた判断」に変えます。この安心感が、長期的な職場定着につながります。

2026年に使える補助金の申請ステップと注意点

補助金には申請のタイミングや注意事項があります。焦って動くのではなく、正しい順序で準備を進めることが重要です。

申請の基本ステップ

  1. 課題の可視化:現状の離職率・残業時間・業務負担を数値で把握する
  2. 公募情報の確認:都道府県の担当窓口・公式サイトで令和8年度の公募開始時期を確認(2026年4月以降、都道府県ごとに順次開始見込み)
  3. 交付決定を待ってから発注:補助金の交付決定前に機器・ソフトを発注・購入した場合、原則として補助対象外となる(最も多い失敗パターン)
  4. ICT導入と並行してオンライン医療相談体制を整える:届出不要のため先行導入が可能。夜間の安心感を早期に確保できる
  5. 職員への説明と定着支援:ツールを入れても使われなければ意味がない。導入前の合意形成と、導入後のフォローアップが定着の鍵

DX導入が失敗するパターン

補助金活用やICT導入を進める中で、「効果が出なかった」という施設も実際に存在します。よくある失敗パターンは以下の通りです。

  • 現場への説明が不十分で「使いたくない」という抵抗が生まれた
  • 使い勝手の悪いシステムを選んでしまい、結局白紙に戻ってしまった
  • IT担当者不在のまま導入し、トラブル時に対応できなかった
  • 補助金の申請タイミングを誤り、自己負担が想定より大きくなった

DX導入は「入れること」ではなく「使い続けること」が目的です。施設の規模・職員構成・現場の習熟度に合ったシステムを選び、段階的に展開することが成功の鍵となります。

テクノロジーは「ケアの代替」ではなく「人を守る盾」——現場のメンタルケアに必要なこと

▼ 医師監修コメント:介護DXとメンタルヘルスの関係

「テクノロジーが人の仕事を奪う」という不安を介護現場でよく耳にします。しかし、テクノロジーの役割はまったく逆だと感じています。記録業務や申し送りをデジタル化することで生まれた「余白の時間」は、職員が入居者と本当の意味で向き合う時間になります。見守りセンサーが確保した「一人で判断しなくていい安心」は、夜勤担当者の精神的余裕につながります。オンライン医療相談が提供する「いつでも相談できる体制」は、職員が孤立しないための社会的サポートの一形態です。医学的には、こうした「コントロール感」と「社会的サポート」の存在が、バーンアウト予防の最も重要な因子として知られています。DXは人を排除するのではなく、人が「人らしいケア」に集中できる環境を作るためのものです。介護の現場に「辞めない職場」を作ることは、利用者へのケアの質を守ることと同義です。補助金とテクノロジーを賢く使い、まず職員が安心して働き続けられる環境を整えることが、施設経営の最重要課題だと私は考えています。

まとめ:補助金 × DX × 医療相談の「三位一体」で職場を変える

本記事で解説した内容を整理します。

  • 介護職員の離職率は改善しているが、3年未満離職・心理的疲弊という構造的問題は続いている
  • 1人の離職コストは70〜180万円。DXの自己負担(補助金活用後)と同水準であり、「今投資しないことのコスト」を意識することが重要
  • ICT導入(記録効率化)・見守りセンサー・オンライン医療相談の組み合わせが、職員の身体的・精神的負担を同時に軽減する
  • 2026年度の介護テクノロジー導入支援事業(補助率最大3/4)は4月以降に都道府県ごとに公募開始。交付決定前の発注は原則対象外
  • DX導入の前提は「ツールを定着させる運用設計」と「職員への丁寧な説明」。入れることではなく使い続けることが目的

「辞めない職場」を作ることは、利用者へのケアの質を守ることと直結しています。補助金とテクノロジーを活用した環境整備を、まず一歩から始めてみることを推奨します。

オンライン医療相談サービス「Medifellow」について

弊社では、33科・500名以上の専門医体制によるオンライン医療相談サービスを提供しています。365日いつでも相談でき、夜間の急変時の緊急性判断や受診判断のサポートを行います。介護施設向けの法人プランもご用意しています。厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に準拠し、同省のオンライン診療研修を修了した専門医が対応します。

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介護施設向けオンライン医療相談

【記事監修】医師・株式会社Medifellow 代表取締役 丹羽 プロフィール

丹羽 崇 

2005年愛知医科大学医学部卒業。2017年神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科および倉敷中央病院呼吸器内科にて臨床研究管理者・呼吸器インターベンション指導医を兼務。総合内科専門医・指導医、呼吸器専門医・指導医、気管支鏡専門医・指導医などの資格を有するほか、世界肺癌学会、欧州呼吸器学会、米国胸部学会など国内外学会での活動実績や受賞歴を複数有する。現在も診療ガイドライン作成委員や厚生労働省難病指定疾患研究班委員を務め、胸部血管内治療や気管支鏡診断・治療の発展に努めている。

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編集者プロフィール

小原万美子
小原万美子
「一人ひとりの心と役割が輝く社会を創る」ことをミッションに、マーケティング、カスタマーサクセス(コミュニティ)、PRの一貫したコミュニケーション作りを担う。大阪教育大学卒業。卒業後は教育事業会社で広報・採用を行い、その後飲食店向けFinTech&SaaS企業にてProductPR、カスタマーサクセス、コミュニティ運営を担当。同時に、日本の誇れる医療と安心を世界中に届けるビジョンに共感し、広報担当として株式会社Medifellowに参画。広報、マーケティング、グラフィックデザインを行っている。
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