機器メーカー・アメリカ 初めての海外駐在、現地で指定難病を発症。 亀田弦壱様の事例

指定難病

現地での教育、医療、文化など生活に関する不安や課題、生の声を連載するシリーズ「海外駐在員・海外在住日本人の声」今回は、15年ほど前にアメリカ・ニューヨークでの海外駐在経験がある亀田弦壱様にお話を伺いました。

【凡例】

●:インタビュアー池田宇大

■:亀田弦壱様

●亀田様は、海外駐在員で過去アメリカに赴任されておりましたが、その前に海外駐在や留学での生活経験はありましたか?

■海外へはそれまで旅行や大学生の時に語学留学で行った程度でした。中長期で生活するのは、当時の駐在・赴任が初めての経験で、アメリカ・フロリダへの語学留学の経験はありますが、TOEICなども受験経験もなく、実力も分からず、そこまで英語でコミュニケーションできない状態で駐在へ行きました。

●中長期の生活経験がほぼなく、英語力もそこまでではない状態で赴任すると仕事上、大変だったのではないでしょうか?

■初めは大変でした。ただ、顧客は日系の美容サロン等で窓口担当は日本人であったため顧客とのコミュニケーションに困るケースはありませんでした。また、社内は日本人と外国籍が1:1だったのですが、日本人の先輩もいたためある程度サポートはありました。

赴任当初の現地での生活立上げが大変でした。一カ月程度はホテル生活をしながら、自身で日本語の話せる不動産業者を探したり、社会保障番号の取得が必要なのですが手続きを行ったり。

●初めて外国籍も多いチームでの仕事、何か日本との違いや感じたことはありましたか?

■やはり多様性カルチャーだなと感じることが多かったです。人によってはですが、定時に出社しない人が多かったり、私用で気軽に帰宅したりと、当時の日本国内の働き方スタイルとは大きく異なる点が多かったです。

●そのような中で亀田様はアメリカ駐在中に指定難病にかかったと伺いました。

■はい。クローン病(※1)と言う日本では指定難病(※2)となっている病気にかかりました。故安倍晋三元総理も同様の病気にかかっていたので有名な病気です。

ある時、体調不良が長引いたので病院にかかろうと思ったのですが、まず、適切な病院が分からないので現地の事情をより知っている日本人に相談、病院を探してもらい、現地の総合病院を受診しました。

※1 クローン病

大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といい、狭義にはクローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。

(出典:公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センターWebサイト

※2 指定難病

難病は治療方法が確立されておらず、長期の療養を必要とすることで大きな経済的負担を強います。国が「難病の患者に対する医療等に関する法律」に定められる基準に基づいて医療費助成制度の対象としている難病を「指定難病」と呼びます。

指定難病は、難病のうち、以下の要件を全て満たすものです。

・患者数が本邦において一定の人数(人口の0.1%程度)*に達しないこと

・客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること

(出典:LITALICO仕事ナビ

●ニューヨーク現地の総合病院に日本人医師はいなかったでしょうか?

■はい、おりません。英語力もそこまであるわけではないので、色々と不安でした。まず、病院を受診後そのままの流れで緊急での内視鏡検査となりました。説明をしても分からないからと医師から思われていたのか、ほとんど説明なく、不安になりながら全身麻酔を掛けられ検査をするというような状況でした。その後、クローン病と医師から言われました。

●指定難病の病気と診断されて、海外でとても不安になりますよね。

■不安にはなりましたが、実はその時医師の説明がなかったので、そこまで重大な病気だと思っておらずその時の不安度は低かったです。ただ、色々ととにかく説明がなかったので、リアルダと言う内服薬を処方されたのですが、自分で調べると潰瘍性大腸炎の薬であったり、その他、医師の対応に疑問が多々あったため、薬も飲まないようになり、症状は悪化の一途をたどりQOL(生活の質)の低い状態が長く続きました。

●当初、指定難病とは知らなかったので重大さを感じなかったのですね。

■そうです。たまたま両親がアメリカに訪れた際に、近況報告で、クローン病と診断されたことや血便が出るなど状況を伝えたところ、両親が調べて指定難病と分かり、重大さも認識しました。それにより、任期満了を待たず日本へ緊急帰国。日本帰国後は、大阪にある医学研究所北野病院のクローン病に知見が高い専門医にかかり、外来通院でレミケード注射を行い、症状が落ち着いていきました。症状が落ち着くだけでなく、アメリカの現地医師の説明がなかった部分なども日本語で話すことが出来たため自身の状況が細かくわかり、安心しました。

●早めに日本人専門医と話をし、病気の重大度や現地医師の治療方針などについての説明を聞けていたら、QOLの低い状態が長引く生活を送らずに済んだのかもしれませんね。

【本記事の監修・丹羽崇(医師)】

愛知医科大学医学部卒業。神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器 内科および倉敷中央病院呼吸器内科にて臨床研究管理者・呼吸器インターベンション 指導医を兼務。総合内科専門医・指導医、呼吸器専門医・指導医、気管支鏡専門医・指導医などの資格を有するほか、世界肺癌学会、欧州呼吸器学会、米国胸部学会など国内外学会での活動実績や受賞歴を複数有する。現在も診療ガイドライン作成委員や厚生労働省難病指定疾患研究班委員を務め、胸部血管内治療や気管支鏡診断・治療の発展に努めている。

亀田弦壱氏プロフィール

大学卒業後、タカラベルモント株式会社に入社、国際事業部の海外営業としてニューヨーク駐在を経験。その後、ビジネススクールを経て国内最大手の調査会社で経営コンサルタントやグローバル人材に特化した人材紹介会社で物流事業部の立ち上げ等を経験。

亀田弦壱氏

取材担当者
池田宇大
株式会社Medifellow

オンライン診療・医療相談
オンライン医療相談
オンライン医療相談

【法人向け診療・医療相談サービスwebサイト】

【個人向け診療・医療相談サービスwebサイト】

【弊社Webサイト】

編集者プロフィール

池田 宇大
池田 宇大株式会社Medifellow
岐阜薬科大学薬学部卒、薬学士。医療機関の経営コンサルティングを経験。大学病院や自治体病院、公的病院の経営改善に従事。その後、HR業界で採用支援コンサルティングを経験。海外駐在員や日本人現地採用、外国人の転職などクロスボーダーの転職・就職支援に従事。